川村元気『億男』~3億手に入れた男が見つけたお金と幸せの答え

  • 宝くじ当選で突然3億円を手に入れた男がお金と幸せの答えを探す物語
  • 2015年本屋大賞ノミネート
  • 佐藤健と高橋一生主演で映画化の話題作

「人生に必要なもの。それは勇気と想像力とほんの少しのお金さ」

物語の冒頭にも登場するこのセリフは、かの有名なコメディアン・チャップリンが映画『ライムライト』の中で病に侵されたバレリーナを励ますセリフだ。

このセリフに違和感を感じるのは私だけではないだろう。

ここ20年、日本経済は不景気の中にある。数値的に景気は上を向いているらしいが、その実感はない。子どもの7人にひとりは貧困だという。高度経済成長期を支えてきたはずの高齢者もまた深刻な貧困の問題を抱えている。外食や高い買い物を控え、かといって貯金も少ない。結婚や出産をためらう理由に経済事情をあげる若い人も少なくない。

いま、わたしたちの人生の選択肢はお金に左右されている。不景気であれば、”しない”選択が増えてしまうのは当然だろう。それは、人生から楽しみを切り離すことでもある。

スタバの新作メニューが飲みたい。

新しい洋服が欲しい。

旅行に行きたい。

もっとお金があれば…と考えることは少なくない。

しかし、お金があれば幸せかと問われて”イエス”と即答するほどわたしたちも無知ではない。お金をたくさん持っていても、幸せではない人も知っている。中には、お金を持ちすぎたことで不幸になってしまった人も…。

お金とはいったいなんなのか。お金も幸せも手に入れる鍵はなんなのか。

多くの人が知りたい答えのヒントをこの本は教えてくれるかもしれません。

あらすじ

問題はすべて”お金”にある。

二年前、一男の弟が借金三千万円をのこして失踪した。昼は司書として図書館に勤務し、夜間はパン工場でベルトコンベアの前に立ち、寝る間も惜しみ働きながら借金を返済している。

この借金が原因で口論が絶えなくなった妻は一人娘のまどかを連れて家を出た。別居生活も、もう一年半になる。

お金があれば、また妻と子どもと一緒に暮らせるはずなのに・・・。

そんなある日、商店街の福引でもらった宝くじが当選した!当選金額は三億円!!

突然降ってわいたこの大金をいったいどうしたらいいのか!?

興奮と混乱の中で目にした高額当選者たちの悲劇的な人生の末路に、怖れをなした一男は、あるひとりの男をたずねた。

九十九(くつも)は、ベンチャービジネスを起業し、億万長者となった大学時代の親友だ。

「お金の使い方を、その先にあるはずの、お金を幸せの答えを、僕に教えて欲しい」

九十九は一男に、まずは三億円を現金にすることを提案する。ふたりはそのお金で豪勢なパーティーを開くが、翌日目を覚ますと、九十九と三億円は消えていた!?

「九十九と三億円」の行方を追ううちに、一男は「お金と幸せの答え」に近づいてゆく…。

お金があれば幸せになれるのか?お金がなければ幸せになれないのか?価値観はそれぞれですが、この本を読み終えた時、あなたの答えも見えてくるかもしれません。

 映画「億男」

2018年10月劇場公開
劇場で観てきましたが、とてもよかったです。主役クラスの豪華なキャスト陣。みどころは、モロッコの砂漠の中で『芝浜』を語る九十、それを正座して聴く一男、ふたりだけの”砂漠落語会”のシーンです。
【監督】大友啓示
【音楽】BUMP OF CHICKEN『話がしたいよ』
【キャスト】
一男:佐藤健
九十九:高橋一生
十和子:沢尻エリカ
万左子:黒木華
百瀬:沢村一輝
千住清人:藤原竜也

本をチェックする

億男
マガジンハウス

受賞歴など

2015年本屋大賞第10位

こんな人におすすめです

お金が好きな人、お金持ちになりたい人に。
旅に出たい人に。
幸せとはなんだろう、と考えている人に

著者プロフィール

川村元気(かわむらげんき)

1979年、横浜生まれ。

上智大学新聞学科卒業。映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『君の名は。』などヒット作を次々と手掛ける。2010年アメリカThe Hollywood Reporter 誌の「Next Generation Asia」に選出される。2011年、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を最年少受賞。東京2020開会式・閉会式4式典総合プランニングチームのメンバーにも就任される。

2012年『世界から猫が消えたなら』で小説デビュー。

【受賞歴など】

『世界から猫が消えたなら』2013年本屋大賞第8位

『億男』2015年本屋大賞第10位

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