- 原爆・ヒロシマのノンフィクションノベル
- 戦争や平和について考える本
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1945年8月6日、月曜日、広島ー。父と過ごすいつもと変わらない朝のはじまりは、ひとつの爆弾によって奪われた。
瀕死から生き抜いた原爆体験をつづる
至近距離で被爆し、全身に大きなやけどを負いながら、奇跡的な回復をした進示さんの半生を娘・章子さんが描いたノンフィクションに基づいた小説。
原爆が投下された朝、その時、進示さんは父とともに瀕死の状態となった。
何度も「もうだめだ」と思った時、進示さんを支え励まし、「生きろ」と奮い立たせてくれた父。たくさんの大切な人を失いながら、その中で触れたあたたかさに感謝し、見つけた希望を生きる力にしていった進示さん。どれほど、心細く辛い思いがあっただろうと思う。
あの日からの出来事を、冷静で確かな描写でつづられるその文章の柔らかさや表現の豊かさは、進示さんの人柄を表しているようで、娘・章子さんの父への思いにも通じるよう。
私は恨みつらみに重点を置き、未来ではなくて過去にしがみつくことには賛成しない。そんなことをしていても、何ひとつ良いことは生まれない。狭い視野で物事を語ってもだめだ。狭い視野こそが、世界を戦争に巻き込んだのではないか。
進示さんは、ニューヨークの国連本部に父の形見である懐中時計を寄贈したのだが、その時計が盗難にあい、現在行方不明であるのが、なんとも心痛い。著者の美甘章子さんは、臨床心理士としてアメリカに在住している。すでに海外で翻訳・出版され、映画化の話も出ているそう。この作品が広く知られて、懐中時計が戻ってきますように、と祈っている。
ブックデータ
単行本: 204ページ
出版社: 株式会社講談社エディトリアル
ISBN-13: 978-4907514082
発売日: 2014/7/8
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