三浦しをん『舟を編む』~美しき辞書編纂の世界

三浦しをん『舟を編む』
  • 【BOOKS雨だれ】中学生におすすめ50冊!
  • 辞書編纂を描くおしごと小説
  • 2012年本屋大賞受賞・映画化の話題作

本の紹介

ひとことでいうと辞書編纂に人生をかけた男たちのロマンの物語を、コミカルさをスパイスに加え、へらべったく伸ばしてクッキーに焼き上げてみました、という感じ。紅茶でもそえて、さくっと軽く召し上がれます。
辞書編纂などという仰々しく堅苦しい一大事業を、クッキーというちょいとつまめるお楽しみおやつの如く、薄く軽やかに書き上げ、しかもバターのコクはきっちり残す満足感。三浦しをんにしか出来ないだろうなぁと感心させられる。
本好きが食いつく題材、確かな文章力、程よい読みやすさ、本屋さんたちが選ぶ本屋大賞にピッタリの作品です。

(P71)どれだけ言葉を集めても、解釈し定義づけをしても、辞書に本当の意味での完成はない。1冊の辞書にまとめることができたと思ったっ瞬間に、再び言葉は捕獲できない蠢きとなって、すり抜け、形を変えていってしまう。辞書づくりに携わったものたちの労力と情熱を軽やかに笑い飛ばし、もういちどちゃんとつかまえてごらんと挑発するかのように。

辞書好きさん以外の人には、たかが辞書になにをそこまで、と鼻で笑われそうなところだが。文章だけ読んだら、まるで「愛」のようではないですか。(本書でも愛の定義については、悩める解釈が書かれているが)この本は丸ごと、まさに辞書への愛が描かれています。

本屋大賞受賞作というのもうなづける。

文字が好き、紙のページをめくるのが好き、言葉の妙が好き、ただ読むのが好きな「本好き」たちが集う書店の中で、「辞書好き」の密度はおそらく濃いだろう。そんな辞書好きたちなら荒木が辞書に惹かれる幼少期を綴った、最初の数ページに心をわしづかみにされた私の気持ちがわかるはず。

辞書で引いた意味に書かれた言葉をまた辞書で引く。「それ、わたしもやった~」「わかる」という人も多いはず。そういうわたしも、まさに。

本好きで、辞書好きを匂わせる女流作家・三浦しをんさんらしい着眼点。

辞書で調べた言葉の意味を捕えて理解することはできても、モノにするのは難しいもの。力のある作家さんは、ことばを言葉としてのみならず、そこに自身の匂いのようなものを織り込んでいく。同じ言葉でも、その作家さんが使うと他の作家さんの書物で読むのと違う、その人だけの言葉になるの。三浦しをんさんはそんな作家さん。

ちなみに、私の相棒は「広辞苑 第5版」

取材に時間をかける三浦さん、きっとこの本に関してもきっとたくさん取材を重ねたことと思います。あえて読みやすくまとめ、削った内容も無くさんあるのではないだろうか。だって、もっと読みたいもの。

映画・コミカライズ化

映画

2013年4月劇場公開
【監督】石井裕也
【キャスト】松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー
第37回日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞ほか多数受賞。ほか多数の国内映画賞を受賞しています。
2013年に香港で、2014年韓国でも劇場公開され、注目されました。

アニメ

2016年フジテレビ「ノイタミナ」でアニメ化放送。

【監督】黒柳トシマサ
【キャラクター原案】雲田はるこ
【アニメーション制作】ZEXCS
【主題歌】岡崎体育「潮風」

受賞歴など

2012年本屋大賞受賞
国語教科書でおすすめの本
三省堂国語教科書中学3年「小さな図書館」で紹介されています。
公立高校の国語入試問題にも出典されました。
【2012年】愛媛県
私立中学校の国語入試問題に出典
【2016年】東京学芸大学附属世田谷中学校

本をチェックする

舟を編む (光文社文庫)
光文社
文庫本はこちら

文庫: 347ページ
出版社: 光文社
発売日: 2015/3/12

出版社 ‏ : ‎ 講談社
発売日 ‏ : ‎ 2017/7/7
アニメ化のキャラクター原案を担当した雲田はるこさんによる作画で漫画コミックが刊行されました。映画のコミカライズ。

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