三浦しをん『風が強く吹いている』~駅伝小説の金字塔

三浦しをん『風が強く吹いている』
  • 中学生・高校生におすすめ
  • 大学駅伝をテーマにした小説
  • スポーツが好きな人におすすめ

駅伝青春小説NO.1!無名の新設大学駅伝部が、箱根出場に青春をかける。駅伝が好きな人も、走ることが好きな人も、スポーツなんか嫌いな人も、これを読み終えた後では箱根駅伝が違ったものに見えるはず。

本の紹介

マラソンという全くの個人競技でありながら、襷をつなぐことで団体競技となる。ただの襷ではない。何十年と箱根を往復し、何百人の手に渡されてきた襷。そのことが選手をがむしゃらに、ただひたむきにさせる。仲間のために、歴史のために、未来のために。

箱根駅伝、大好きです。2012年は両日ビデオ録画し全コース余すところなく楽しんだ。毎年そうだが、この年は特に見どころ満載、感動で震えた。

これは、あの箱根駅伝を舞台に描かれる青春スポーツ小説である。箱根ファンなら、読まずにいられないはずだ。

箱根駅伝といえば、名門大学たちが代々受け継がれてきた襷をつないで走るイメージが強いが、この小説に出てくるのは、これまで箱根出場経験はない(箱根駅伝すら知らなかったり)。
彼らは陸上部員でもない(勝手に登録はされてるが)。
それどころか、 スポーツに無縁(特に約1名)な人たちだったりする。

竹青荘の管理人的存在のハイジ、走りの天性をもつ走(かける)、元サッカー部の双子、就職浪人ヘビースモーカー、黒人留学生、漫画オタク…無謀とも思えるメンバーで挑む箱根駅伝で、彼らが目指す「頂点」にたどり着けるのだろうか。

どのメンバーも個性が光っていて、コミカルに描かれており、青春スポーツ×コメディーとして楽しめます。キャラ設定がしっかりしているので、いろんなメンバーに共感しながら読めるのではないかしら。

十人十色のメンバーたちが、それぞれの思いを抱えて、必死に走る姿に、こちらもいつしか引き込まれて夢中になる。

ぽっと出の輩が簡単に出れるほど箱根は甘くないぞ~!!と、日々練習に励んでいる名門大学陸上部(本書でいえば東体大か)のみなさんからお叱りの声が飛んできそうだが、そこは、歴史も重いが、新参者も受け入れる箱根駅伝の素晴らしさ。

箱根駅伝に出場するには、前年大会で上位10組に残るか、あるいは、予選会で残り10組に選抜されるか。予選会突破のシーンは、この小説のひとつの山場でもある。

お気に入りのシーンを紹介。

①箱根駅伝1日目、神童の5区。

体調を崩しながらの山登りで、最後まで必死に登る姿に、今年の東農大を重ねて応援せずにはいられない。

②6区のユキが、走の速度を体感するくだりもいいね。「走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。」というセリフにアスリートの孤高さを感じて、「キャ~カッコイイ~」とちょっとミーハーっぽくときめくなど。

箱根駅伝ファンにはもちろん、走りを体読してみたい方にぜひおすすめ。読みながら、箱根の風を感じる1冊です。

おすすめポイント

国語教科書で紹介

東京書籍中学校2年生国語教科書

公立高校国語入試問題に出典

【2016年】沖縄県

私立中学国語入試問題に出典

【2018年】頌栄女子学院中学校

映画・ドラマ化

2009年劇場公開
【監督】大森寿美男
【出演】小出恵介、斉藤圭太、斉藤翔太、ダンテ・カーヴァー(ソフトバンクのCMでおなじみ)
【音楽】千住明

原作を読んでから映画を見るのがおすすめ。2時間におさまりきらないから(>_<)
じっくりと読める原作の方が、ぐっと迫るものがありました。

アニメドラマ

2018年、東宝アニメーションよりアニメ化放送
【監督】野村和也
【アニーメーション制作】Production I.G
【キャラクターデザイン】千葉崇洋
【声優】大塚剛央、豊永利行、入野自由
【公式サイト】TVアニメ「風が強く吹いている」

本をチェックする

表紙のイラストやソフトカバーなところや紙質も、文庫本よりも単行本の方が好みです。

文庫: 672ページ
出版社: 新潮社
発売日: 2009/6/27

新装版 風が強く吹いている 1
復刊ドットコム
漫画はこちら

この本もおすすめの本

↓ 同じ作家の本を読みたいなら ↓
面白かったらこの本もおすすめ